こんにちは、かなこ(@MinmachiBuho)です。
今回は、「子どものいのちと向き合う」というテーマで意見を書いていきたいと思います。
私は以前、大学病院及び併設の重症心身障害児施設で勤務していました。
施設では呼吸器がついているような重度のお子さんが多く、NICUから自宅退院が出来ず、ベッドを確保するために施設に入所するというケースもしばしばみられます。
↑少し古い記事ですが、状況はあまり改善していません。
リハビリの対象となるお子さんが、重度な障害や疾患を有しており、無事に自宅退院できるかどうかわからないような場合もあります。
自宅で生活を開始したあとでも、ちょっとした風邪をきっかけに亡くなってしまう子もいます。
理学療法士などのリハビリセラピストは、お子さんの全身状態が悪くなると「リハビリ中止」という医師の決断の下、お子さんやご家族に関われなくなってしまうケースが多く、
「この子たちに、私が出来ることは何かあったんだろうか。何も出来なかった」
そうやって悔やむ経験ばかりしてきました。
そのような経験の中から、治療で命を救うことは出来ない”私”なりの「いのちとの向き合い方」について考えるようになりました。
医療的ケアだけでは「家族」を救わない
小児医療・療育に携わる人たちが忘れちゃいけないのは
子どもに障害・医ケアがあることは両親に【特別な子育て】をする責任と義務が課されたことを意味するんじゃないってこと。
どんなケアがあっても、まずは【普通の子育て】、ひとつの”いのち”として接するように支援するのが私たちの仕事。— なかむらかなこ@オンライン子育て相談始めました (@MinmachiBuho) February 5, 2019
例えばNICUにお子さんが入院しているご家族の場合は、ご自身の心身の回復もままならず連日のように面会をしています。さらにお子さんの状態によっては抱っこなどの触れ合いも難しい場合も。
全身状態が安定してきても、医ケアが必要な場合はその方法を覚えなくてはいけませんし、
<家族>になるための療育的ケア、心に寄り添うケアが不足しがちです。
こちらの本は、歯科医・歯科衛生士・言語聴覚士がチームを組んで口唇口蓋裂の赤ちゃんの早期ケア(治療ではなく療育的ケア)を行ったり、出生前診断で陽性となったご家族に療育的カウンセリングを行うケース等が紹介されています。
病態が重症で命の危機にあるような子であっても、先天性疾患が重度な子であっても「嫌なことがあれば泣き」「リラックスすれば表情が柔らかく」なります。
一見当たり前のように見えるこれらの小さなサインを療育的視点をもった専門家が介入し親御さんに伝えていくことが”家族になる”ための一歩だと、こちらの本では解説しています。
グリーフケアの始まりは「どう生きたいか」
タイトルにもあるグリーフケアとは、主にご家族等が亡くなった際に、遺された人たちに行うケアのことです。
「グリーフ=Grief」は日本語では喪失の痛みと訳されることも多いですが、本来は大事な人や物事、夢などを失った際に感じる様々な感情の総称を意味します。痛み、では本来の意味とずれてしまうこともあり、日本でもそのままグリーフとして使われています。
そのように聞くと、グリーフケアは亡くなった後から開始するというイメージを持つかもしれませんが、本来は極端に言えば「生まれた瞬間」から始まっているものです。
家族が感じる”痛み”
出生時から全身状態が悪く、NICUを退院する前にお子さんが亡くなった際に親御さんが後悔を感じることとして
- 一緒の時間をもっと持ちたかった
- 直接ケアをしたかった
が多く挙げられるそうです(↑で紹介している「いのちのケア」より)
治療をし、少しでも命を長く取り留めたかった、ということでもありますが、それと同時に「家族」として一緒に時間を過ごしたかった という気持ちが表されているそうです。
実際にお子さん本人とともに「どう生きるか」に精いっぱい向き合ったご家族がいました。
NICUで働くスタッフには是非一度目を通してほしい名作です。
本作の主人公の赤ちゃんは退院が難しい状態です。
医療チームもご家族と正面から向きあい、ご家族、さらにお子さん本人にどう生きてほしいのかを何度も話し合いました。
最終的には、妹が大好きなお姉ちゃんも一緒に(通常ご両親以外、特にお子さんはNICUには入れません)家族みんなの時間を過ごすことが出来ました。
やりきれない思いや悲しみはあれど、納得のいく別れ方を出来るかどうかは、その後のグリーフとどう向き合っていくかに大きく関わります。
そう思うと、私たちの人生はグリーフケアと地続きになっていることがわかります。
今目の前の命とどう向き合うか。
それは障害や疾患の有無に関係なく、我々ひとりひとりの人生にも大切なことを教えてくれます。
子どものホスピスとは
【子どものホスピス】
大人のホスピスはいわゆる「終末期」の方が入所する
子どものホスピスは重度障害や医ケアをもつお子さんやご家族が休憩したり、リラックスしたり、レジャーを楽しんだりする場所。レスパイト機能があるのはもちろん、家族・きょうだい支援もある。
日本にはまだ数件しかない。 pic.twitter.com/myUnYuRyOf— なかむらかなこ@オンライン子育て相談始めました (@MinmachiBuho) February 5, 2019
重度のケアを必要とするお子さんの日常は、ご家族が身を削ることで支えられています。
その負担を軽減するために、病院や施設などで短期的にお世話を交代してくれる”レスパイト”という制度があります。
非常に良い制度である一方、ご家族の中には「子どもを預けてしまう罪悪感」を感じられる方がいるのも事実。
そんなときに、子どものホスピスが活躍します。
子どものホスピスは大人のそれとは少しイメージが違い、いわゆる「ターミナル」の方が入所するのではなく、
病気やケア、障害をもつお子さんとそのご家族が病院や施設の中だけで過ごすのではなく、
レジャーのように楽しんだり、自然の中でリラックスしたり…
たくさんの経験が出来る場所になっています。
日本にはまだ数件しかありませんが、少しずつ確実に増えていっています。

ちなみに↑のTweetの写真は、世界で一番はじめに子どものホスピスとして開所した「ヘレン・ダグラスハウス」という場所のものです。
このような安らげる時間を過ごせる場所が少しでも多く出来ることを祈ります。
まとめ
医療者として、療育者として、いのちとご家族とどのように向き合っていくべきかはまだまだ答えが出ません。
何も言えずに、ご家族の前で泣いてしまったこともあります。
だからこそ、これからも目を背けずに、考え抜いていきたいと思います。