こんにちは、かなこ(@MinmachiBuho)です。
先日、ウィーンのスタートアップがこちらのようなVRゲームを開発した、というニュースを見ました。

椅子に座った状態でセンサーとなる靴を履き足を動かすことで、VRの世界の中で自由に動き回りゲームを体感できるというもの(概要)。
これはゲームとしてはもちろん、歩行の訓練などの高齢者用リハビリテーションにも応用できるのではないか…と書いてありますね。確かに狭い空間でも、「ただ歩く」のではなく遊びながら歩けることでモチベーションアップにつながりそうです。

VRってやっぱすごいなぁ
私たちの脳やリハビリにどういう影響を与えるのかを調べてみヤス!
ということで、今回はVR×リハビリテーションの最新動向についてまとめてみました!
VRがリハビリテーションに及ぼす可能性
VRで効果が期待できるリハビリテーション
①火傷を負った小児患者のリハ中の痛みが3割前後軽減、VRリハが楽しかったと報告
②幻肢痛の軽減
③複合性局所疼痛症候群の子どもの自己効力感向上、できることの"見える化"
— なかむらかなこ (@MinmachiBuho) June 8, 2019
今回は、こちらの本の内容を中心にまとめていきます。
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①社会問題やPTSDの軽減に効果!
今まで私たちが何かを「体験」しようと思うと、映画やテレビ、本や漫画などと言った映像や紙媒体がそこに使われてきまいた。
一方最近では、「体験」の機会としてVRが注目されています。
動画のような認知症体験のほかにも、難民のおかれている状況や人種差別に対してなど、VRを用いることで他のメディアと比較して「共感」の度合いが強くなるといわれています。
共感すること=行動変容がある、とまでは断言できないということですが、共感する・自身の経験として心身に強く刻まれるような感覚は、行動にも何かしらの好影響を及ぼすのではないかと感じます。
PTSDの治療にも
9.11の被災者で、PTSDの症状に苦しんでいる方々に対し9.11の状況を緻密に再現したVR動画を使って暴露療法・認知行動療法を行うという手法もあるそうです。
現状のセラピーのなかでは、PTSDの原因となる出来事を思い出し語ったりするような手法がとられているようですが、VRを用いることでより緻密に、かつセラピストのコントロール下で出来事を追体験できるようになるため、より効果的だと考えられているそうです。
今回読んだ本の中にはn数を増やした場合の結果は載っていませんでしたが、今後研究が進んでくるものと思われます。
リハビリテーションに効果的?!VRの応用方法
本書籍のなかで例として挙げられていたのは、やけど治療で入院中の子ども54人に、瘢痕に対するエクササイズの最中にVRを行ってもらうというもの。結果は
対照条件(通常のエクササイズ)に比べて27~44%痛みが軽減していることがわかった。また、VRの方が楽しかったと報告した
となったそうです。
VRによる没入感により、痛みに対してディストラクション効果が働き、痛みの感覚が抑制され、リハビリテーションに対するマイナスイメージが付きにくくなるというもの。
火傷による瘢痕治療は痛みを伴い、子どもたちは火傷の苦痛に加えてさらに辛い思いをする必要が生じます。その中でリハビリテーションを”楽しい”と感じられることは非常に有意義ではないでしょうか。
ミラーセラピーに変わる治療効果にも期待
ミラーセラピーとは、幻肢痛や麻痺側上肢に対する治療の代替方法のひとつです。
腕を切断した人の幻肢痛(ないはずの腕を痛がること)への対応として、カリフォルニア大学のラマチャンドラン博士が開発しました。
現在では脳卒中や脳血管障害によって片麻痺になった患者への治療にも用いられています。
鏡に映った非麻痺側の部位の動作を患者自身がよく観察し、麻痺した部位を同じように動かそうとする治療法です
しかしながら、ミラーセラピーには適応になる方、いまいちハマらない方が一定数の割合でいるというのが現状。それには「錯覚しづらさ」が要因となっていると考えられます。
そこで、VRがミラーセラピーと同様の効果をもつのではないか、という取り組みがなされています。
VR上にあたかも自分から腕が生えているように2本の腕が映し出されており、それが一定の動きに反応し”自分が動かしているように”動いているかのように錯覚する、というものです。VRがもつ”没入感”がミラーセラピーの効果をより一層高めていると考えられます。
自己肯定感の向上にも
VRによる「没入感」や「錯覚」は、身体の運動が自由に出来ない方々の”私でも出来るんだ”という自己肯定感にも影響するといわれています。
複合性局所疼痛症候群とは:
疼痛(焼けつくような痛みや疼くような痛み)がよくみられる。1つの末梢神経の分布には一致せず,環境変化や精神的ストレスにより悪化することがある心理的苦痛(例,抑うつ,不安,怒り)がよくみられ,それらは原因不明という状況,効果的な治療法の欠如,長期に及ぶ経過によって助長される。 (MSDマニュアルより)
複合性局所疼痛症候群4名にVRゲームを体験してもらった結果を以下に示します。
通常のエクササイズ等では、痛みによって中断することも多かった子どもたちがVRを行うことでモチベーションアップがアップし、タスクの9割以上をやり遂げることが出来た。ということです。
この実験である複合性局所疼痛症候群の子たち以外にも、身体に麻痺がある子たちのように、自身では小さな動きしか起こせない子どもたちが、VRの世界の中でそれを大きな動きとして体感することによって、自己効力感の向上にも期待できのではないかと期待しています。