【悪い?当たり前?】優生思想についてわかりやすく解説します

インクルーシブ

こんにちは、かなこ(@MinmachiBuho)です。

 

優生思想、という言葉を聞いたことがあるでしょうか?辞書で調べると

身体的・精神的に秀でた能力を有する者の遺伝子を保護し、逆にこれらの能力に劣っている者の遺伝子を排除して、優
秀な人類を後世に遺そうという思想。優生学の成果に立脚する。人種差別や障害者差別を理論的に正当化することになったといわれる。Wikitionaryより

と定義されているようです。

最近では津久井やまゆり園で起きた公判をめぐり、ニュースなどでこの言葉を耳にすることも多いと思います。

まもなく開かれる相模原事件初公判 「内なる優生思想」に私たちはどう抗うか
障害者入所施設「津久井やまゆり園」で元職員の植松聖被告が入所者19人を刺殺し、26人に重軽傷を負わせた相模原事件の初公判が間もなく開かれる。「起こるべくして起こった」とこの事件を考え、「内なる優生思想」をテーマに対談集も出版した作家の雨宮処凛さんに、植松被告を生み出した日本社会についてお話を伺った。

なんか過激な思想というか、タブーな感じ。

実際どういう考え方なの?

 

そう、ちょっと耳馴染みはあるものの、「実際どういう思想なの?いけないことなの?」ということまでは、なかなか理解しづらいと思います。そこで今日は、”優生思想”についての是非を考える前に、その成り立ちや思想の目的、現代までの使われ方などなど、優生主義のひみつについて学んでみましょう。

 

なかむら
かなこ

身構えてしまうかもしれないけど、まずはそれが何なのか?を知ってみよう

優生思想のひみつ①:実はイギリス出身

優生思想と聞くと、第二次世界大戦時代のナチス・ドイツを思い出す方が多いかもしれません。

コチラ。有名な画像なので目にしたことがある人もいるかもしれませんね。これは要するに、慢性疾患や遺伝性疾患などで労働が出来ない人を生きながらえさせるために、年間これだけのお金がかかっていますよ。それは皆さんからの税金です。というような事を言っています。今の私たちが見ると、おっそろしいプロパガンダだと思いますよね。これが許されていた時代、社会背景だったんです。

(ちなみにこちらはナチス・ドイツの代名詞ともいえるアウシュビッツ強制収容所に行ってきた筆者の感想です。良ければご覧ください)
https://note.com/kanatsubu/n/n8c8a77e31fc5

 

なので、優生思想といえばドイツ!というイメージなんですが、実は優生思想の生まれはあのグレートブリテン、イギリスなんです。

そもそもの始まりは、意図的に誰かを排除したり、差別したりしようというものではない、より良いイギリス人を増やすために作られた学問でした。その着想は、かの有名なダーヴィン著「種の起源」から来ているとされています。

かつてホモサピエンスが類人猿から進化してきたように、我々現代人もより素晴らしく進化出来るはず!という情熱とともに、Socialdarwinism(社会進化論)が唱えられるようになりました。これは20世紀初頭の、たった100年前の話です。

BBCの動画を見るとわかりますが、純血のイギリス人とそうでない者をより分けるために、瞳の色、頭のサイズ、髪の色など分類するためのツールなどが作られたそうです。

↑リンクのBBC動画より。ヘアカラーの分類ツール

同時に、「より適切な者」(研究者などの知的能力が高いと考えられていた者など)への出産が奨励されていたり、反対に「不適切な者」(移民や知的障害者)に対する強制的な避妊手術などを含んだ出産の抑制が行われていたそうです。

 

少し長編、かつ日本語字幕がありませんが、興味がある人は是非見てみてください。

優生思想のひみつ②:統計学の産みの親

そして実はこの優生学、あの統計学の産みの親なんです。

と言いますのも、優生学のパイオニアたちは、たくさんの人間を測定し、そして頭囲や髪の色などのデータを整理していったと先ほど説明しましたよね。このような作業を通して彼らは同時に統計学の基礎となるp値や相関係数など、非常に大きな発見をしていったそうです。

そして、人間の”能力”自体もイラストのようなベルカーブに沿って分布していると彼らは考え、彼らの学問によって、その形を大きく改善させようと試みていたんですね。

悪者みたいに言われている印象だけど、

私たちの生活に直結する統計と関係していたなんて!

 

なかむら
かなこ

ナチス・ドイツに利用されるまでは、

非常に良い学問と考えられていたことがこの背景からも見て取れるね

優生思想のひみつ③:わたしたちにも関係している

とはいえ、優生思想そのものは一般市民である私たちには関係のない話では?と思う方もいるかもしれません。が、実はこの思想は私たちひとりひとりと強く関係しているんです。その理由を見ていきましょう。

下の2つのベルカーブを見てください。

左のベルカーブは一般的なもの。右の変形型は優生学者が目指した、上方に変位されたベルカーブです。前述したように、彼らは「より良い人間を多く」することを目的にしていたため、左の一般的なベルカーブでは彼らの理想にそぐわなかったんですね。そこで、彼ら自身が創り出した統計学のルールから外れた、新たな常識を作ろうとしました。

さて、どうして右のベルカーブが私たちにも関係しているかというと、優生思想をベースにした社会では「持つものがより持つ、優れたものがより優れる」ようになるためです。ここに資本主義・新自由主義の経済システムが掛け合わさると、より経済的に優れている(つまり金持ち)がより優れた生命体になっていき、そうでない一般市民は相対的にみて「不適切な存在」と見なされるようになるリスクがあるといえます。

 

ちょっと複雑ですね。ではここでゲノム操作を例にとって考えてみましょう。現在、遺伝子そのものを操作して人間の能力を高めたり寿命を延ばしたりするようなゲノム操作が徐々に実用化に向かっています。

Netflixでゲノム操作に関するドキュメンタリーが放送しています。こちらでは「誰もが平等にアクセスできるゲノム操作」を目指してエンジニアが奮闘していますが、それでも一定水準より高い介入においては、高い金銭的コストがかかることが想像に難くありません。

そうなれば、例えば1回見たものは忘れない知能の高い人間が増え、絶対に病気にならない体を持つ人間が多くを占めてくるかもしれません。SFじみたことのように聞こえるかもしれませんが、そのような治療が解禁になったときに、あなたはそのコストを払える自信がありますか?ちなみに私はありません。

<健常>と<障害/異常>の線引きは非常にあいまいで、このような人口動態や社会的背景により大きく変化します。あなたが「生殖を行い、生きていくには不適切」とジャッジされる日は、そう遠くない未来に来るかもしれません。ということです。

優生思想のひみつ④:あなたにもある?”ステルス優生思想”

ステルス(stealth): 隠密。こっそり行うこと。「ステルスマーケティング」デジタル大辞泉より

ここまで見てきましたが、あなた自身の中にも優生思想にもとづいた考え方が根付いているでしょうか?おそらくこれを読んでいる方の中には、「障害者や移民は生きる価値がない!!!!純血の日本人こそ至高!!!!」という情熱的なイデオロギーはあまりお持ちでないと期待しています。

まして実際物理的に危害を加えようなんて人はほとんどいないはずです。では優生思想はもはや存在しない理念なのでしょうか?

そこで我々が気づかなくてはいけないのが、ステルス優生思想です。簡単にいうと「ゆる優生思想」

これは、自ら積極的に「不適切者」をジャッジし、排除するような行動には出ないものの、そのような考え方自体にはなんとなく同意出来るなぁ、というレベルのもの。

相模原の事件のあとも、被告に対して同情的もしくは同意するような意見が見られたのは、このステルス優生思想がはびこっていることが原因だと考えれます。

 

このステルス優生思想のやっかいなところは、普段障害者等の”弱者”と接する機会が少ないために、本人も自覚なくその考え方を育てている場合がある、という点だと考えられます。その人知れず育てた思想が、いざ!というタイミングでふと顔を出す。実際に危害を加えるような思想の人たちに対し、暗黙の肯定をしてしまう可能性があるということです。

正直言って、障害者と接する機会が多く、さらに学問としても知識を持っている私でも、ステルス優生思想は多少なり抱いていると実感しています。大切なのは、自分のもつイデオロギーに自覚的になることではないでしょうか。無自覚な思想は誰かを強く傷つけ、排除していく可能性があります。最終的にはその刃は自分自身にも刺さりかねません。

まとめ

よくわからない”優生思想”について、成り立ちや背景についてまとめてきました。単なる弱肉強食!適者生存!では語れないものであるということが理解頂けましたでしょうか?

この記事を読んで、優生思想、なんか怖い!とタブー視せず、ぜひ周りの方やご自身と向き合い、自分の中にある「思想」について思案する時間をとって頂ければこれ幸いです。