【インターセクショナリティ①】障害女性について、ジェンダー×障害学から考える

インクルーシブ

こんにちは、かなこ(@MinmachiBuho)です。

今日は、障害とジェンダーという2つの一見異なる問題について、解説していきたいと思います。言うまでもないことですが、人類のおよそ半数は女性です。そのため、障害者の中でももちろん女性が半数近くを占めます(参考)。

一方で、”障害”問題においても非障害社会と同様に、男性優位な構造が成り立っており、障害者団体などは男性の意見を中心に運営されていることも指摘されています。

 

障害者は障害差別を受け、女性は性差別を受けることが多いため、障害とジェンダーの2重の差別を受けると評されることも多いですが、実は現実はさらに複雑だということがわかってきました。

そこで今回はインターセクショナリティという言葉を切り口に、ジェンダー×障害の抱える課題について解説していきます。

インターセクショナリティとは:

差別について考える時「人種や宗教、国籍、性的指向、性自認、階級、障害など、ひとりひとりの持つ属性や、それによる差別の構造は多層的で”交差”している」という考え方 一般社団法人fair(フェア)

なんだかわかるようでわからないな…

なかむら
かなこ

複雑な概念だよね。今回はわかりやすい例を挙げて一緒に考えてみよう

障害者間での男女差別

障害者、というとそれだけで一括りにされてしまいがちですが、その中にもさらに男女格差や人種格差が存在すると指摘されています。例えば、発展途上国において障害児は小学校への就学率が非障害児と比べて低いという問題があります。さらに性別でみると、障害女児は男児に比べてさらに就学率が低くなるというデータが出ているんです。

さらに、障害女性は非障害女性・障害男性に比べて性暴力の被害にあいやすいという傾向もあります。

女性障害者の生きにくさ - 記事 | NHK ハートネット
女性障害者に対する差別は、「障害者への差別」だけでなく「女性への差別」が複合されることで、解決への道のりは複雑になりやすいと考えられています。性的な被害や虐待を受けやすいだけではなく、教育、就労、結婚など社会生活に関しても制約は大きく、彼女たちの「生きにくさ」はより深刻です。

このように、現代社会を構成する「男性優位思想」「性差別」が障害者というカテゴリー全体に、かつカテゴリーそれ自体の中にも大きな影響を及ぼしているんです。

 

障害者の自立生活とフェミニズム

また、障害者によるアクティビズムと、フェミニズムの利益が衝突してしまうという例もあります。

障害者の「自立生活」とは、たとえ重度障害があり介護なしでは生活できないような状況であっても、介助者のケアを利用しながら施設ではなく本人が望む場所での生活を送るというものです。

重度障害者も一人暮らし…「自立生活センター」各地に : yomiDr./ヨミドクター(読売新聞)
 重度の身体障害があっても、施設や親元ではなく独立して暮らしたい。そんな願いを支えるのが、全国各地に広がる「自立生活センター」だ。一人暮らしに必要な知識を伝えたり、福祉制度の申請や物件探しに付き添ったりと、様々な場面でサポートしている。(饒

 

障害者運動の大きな要素の一つにこの自立生活の獲得、というものが挙げられます。

一方で、フェミニズム的視点から自立生活を批判する人もいます。なぜなら、障害者が施設ではなく、仮に自宅にて生活を送ろうとすると、必然的にそのケアの役割を担うのは女性ということになるからです。「男性優位社会」の中では、障害者の自己実現と、女性の無償労働からの解放という双方の大きな訴えが矛盾してしまうため、被差別側である”女性”と”障害者”が反発してしまう、という問題が生じます。

障害女性のアイデンティティとフェミニズム

旧時代的な性的役割を押し付けることは、フェミニズムの観点からは批判対象となります。一方で、障害女性にとってそれらの役割をまっとうすることは、女性としてのアイデンティティの回復につながる可能性がある、という例をご紹介します。

障害女性の性的アイデンティティ

 

1987年に、あのウサギマークで有名な雑誌「プレイボーイ」に初めて障害女性がモデルとして登場しました。彼女は障害を負う前からモデルとして活躍していましたが、身体障害を負い車椅子ユーザーとなったことを契機に失った「女性として性的に魅力的である」というアイデンティティの回復のため、プレイボーイに登場しました。

障害学からの視点ではこの登場は、ベッド上で下半身の身体障害が不明瞭な形で表現されており、障害を排除しているという議論もあったものの、多くは

  • 障害者が排除されずインクルージョンとなった

と高評価を受けていました。

一方で、フェミニズムの観点からはこのようなポルノ雑誌は

  • 女性を性的な消費の対象として描いている

として批判の対象になります。

果たしてポルノ雑誌でのセックスアピールを行うことは「障害により失った女性としてのアイデンティティの回復」なのか、「男性から押し付けられている性役割に従っている」だけなのか、まだまだ議論は尽くされていません。

障害女性と母役割

似た事例で、障害女性と母親というケースが挙げられます、障害女性は非障害女性と比べて、生理的及び社会的に「母親になる」ということが難しい状況に置かれています。

フェミニズムでは「家事や子育てによる女性の労働力搾取からの解放」が大きなポイントとして訴えられてきていますが、障害女性にとってはそれらは欲しくても手に入り難いものであったりします。

まとめ

インターセクショナリティについての研究は、まだまだ多くなされていません。このような権利の衝突や利益の矛盾が明確に示されれば、より効果的な政策立案や議論を行うことが出来ます。

日本では障害者の就業率において男女別のデータは示されていません。障害者とひとくくりにせず、より詳細かつ幅広い視点から現状把握を行っていく努力が要されています。