こんにちは、かなこ(@MinmachiBuho)です。
スティグマという言葉を聞いたことがあるでしょうか?Wikipediaによれば、語源はイエスキリストが十字架に磔になった際の掌の傷のことを呼ぶのだとか(参考)。
そのような意味から派生し、ある特定の社会的グループに対してのステレオタイプ的な考えやそれに伴う差別のことを(社会的)スティグマと呼びます。たとえばエイズやハンセン病などの特定の疾患の患者へのスティグマ、生活保護受給者へのスティグマがよく知られています。そして、”障害者”という社会的集団も、特有のスティグマを有しているとされています。

スティグマ=烙印っていうのは聞いたことあるけど、実際どうやってスティグマが作られて
どういう影響があるのかよくわからないなぁ

スティグマは”悪いイメージ”ということだけではなくて、差別や社会参加の疎外など重大な影響をもたらすものなんだよ。そしてそれを作るのは社会規範だと言われているんだ
スティグマ=社会的規範に従えない人々
スティグマとは、ゴフマンというアメリカの社会学者が1963年に提唱した用語です。ゴフマンは、スティグマとは社会で広く容認されている行うべき規範に従えない人々に対して、マジョリティが行う差別やレッテル貼りのことであると述べています。
つまり障害者の場合には、機能障害によって社会から一般的に求められる水準の活動を行えない、暗黙のルールを守れないことによりスティグマ化されているといえます。
スティグマが形成される4つのステップ
①レッテル貼り
ある社会的集団の一員であるというレッテルが貼られることがスティグマ化の最初の段階です。障害者でいうと、医学的診断や障害者手帳を取得することがこれにあたります。
②ステレオタイプとの結合
貼られたレッテルに対してのステレオタイプ的な考え方と、レッテルを張られた個人のアイデンティティが結びつきます。黒人は運動能力が高い、ドイツ人はケチ、といったような、集団を一括りにしてしまうような考え方ですが、あくまでネガティブなステレオタイプがスティグマと関連します。知的障害者はキ暴力的で危険である、精神障害者は努力をせいず怠惰である、というようなものが挙げられます。
③”他者”としてメインストリームから排除される
ステレオタイプ的な考えで見られることにより、”他者”として認識され、社会の主流(メインストリーム)から排除されていきます。人工呼吸器ユーザーの子どもは健常児といてもコミュニケーションが取れないのだから、特別支援学校に行くべきだ、というような考え方です。実際にその子がどのようなキャラクターで、どういった環境が適切かを検討せずに、ステレオタイプ的な考えをもとに普通の子ではないと分離させるようなその思考は強くスティグマと関連しているといえます。
④社会的ステータスの喪失
以上のように社会のメインストリームから排除されることは、社会的・経済的・教育的サービスへのアクセスが制限されることを意味します。それにより、レッテルを貼られる以前に有していた社会的なステータスを喪失していきます。
たとえば事故によって身体障害が生じた車椅子ユーザーが、工夫次第で労働は可能なのに、会社から”もう今までのように働けないだろう”と誤解され一方的に解雇される、といったような事例が挙げられます。この車椅子ユーザーは、フルタイム正規労働者という社会的ステータスや、経済的ステータスをスティグマにより失っているといえるでしょう。
なぜ障害者はスティグマの対象となるのか
スティグマはレッテル貼りから生じると述べましたが、レッテル=スティグマという方程式は必ずしも成り立ちません。例えば白人男性は優秀である、というイメージはレッテルの一種ですが、これにより白人男性が社会的なステータスを喪失するということはありませんね。スティグマは、その社会的グループがその他のグループと比較して、社会的・経済的・政治的パワーが弱いという条件下でのみ発生します。
例えば一般的に障害者は就業率が非常に低く、障害年金を受給しており、さらには年収が非障害者と比較して極端に低いことがわかっています(参考)。障害政治家・議員の数に非常に少なく(参考)、彼らの政治的要望を届けられる体制は非常に脆弱です。このようなパワーの不均衡があることで、障害者に対するスティグマは形成・強化されているといえます。
スティグマはどのように解消できる?
スティグマはどのように軽減、解消することが出来るのでしょうか?多くの研究がなされていますが、代表的な理論はAllportが1954年に提唱したコンタクトセオリーです。マジョリティに属する人々が、スティグマ化されている人々と質の高い交流を行うことで、スティグマを軽減できるということが期待されています。しかしながら、どのような環境での交流が質が高いものであるかは明確な定義がなく、多くの研究者が検証を重ねています。
新たに作られ続けるスティグマ
このようなスティグマは、政策等を通して国家的に強化、新たに作られることがあります。例えば生活保護受給の可否に対する審査基準を強化すればするほど、受給者へのスティグマはより強固になります。また、2020年の現在新たに世界中でスティグマ化されているのが、新型コロナウィルスの感染者です。

例えば昨今の東京都では、夜の街というワードが頻繁に強調されていますが、これは飲食店や風俗業に対して一括りにしスティグマを強化するための言説であることは明白です。

まとめ
今回はスティグマの作られ方について解説してきました。スティグマとは、機能障害をもつことで必然的に発生するのではなく、不均衡な社会構造や、福祉政策等を通じて国家的に生成・再強化されていくものといえるでしょう。
そのため、既存のスティグマを解消することは非常にハードルが高いことであるとも言えます。社会にスティグマが存在していることを認識し、その解消を目的とした対応を体系的に実施していく必要があるのではないでしょうか。