【障害とスティグマ②】障害者の家族はスティグマ化されるの?

インクルーシブ

こんにちは、かなこ(@MinmachiBuho)です。

前回は、障害者がどのようにスティグマ化されるのか、というプロセスとその影響について解説しました。

【障害とスティグマ①】障害者はどうしてスティグマ化されるの?
こんにちは、かなこ(@MinmachiBuho)です。 スティグマという言葉を聞いたことがあるでしょうか?Wikipediaによれば、語源はイエスキリストが十字架に磔になった際の掌の傷のことを呼ぶのだとか(参考)。 その...

上の記事の中で、障害者等の特定の社会グループに属する人々は、広く求められる社会規範に従えないことによってスティグマ化される、というように述べました。では、障害者が属する家族の他のメンバーはこのようなスティグマには晒されないのでしょうか?

障害学の中では、障害者が家族(もしくはその他の密なコミュニティ)に属することで、その家族全体が社会からスティグマタイズされるということを指摘しています。

どうして”障害”はないのに”障害者”と同じようにスティグマの影響を受けるの?

なかむら
かなこ

ゴフマンはそれをCortesy stigmaと呼んでいるよ

主に障害児を育てる親、母親を中心にどのようにスティグマが生じるのか検証が続けられてきているんだ

このような障害者家族へのスティグマは、社会福祉・教育・医療様々な政策やサービスから発生していると考えられます。障害とスティグマ第2弾の今回は、障害児の家族(主に保護者)を中心に、どのようにスティグマが発生し、影響しているかを一緒に学んでいきましょう。

家族に及ぶスティグマ:Courtesy stigmaとは

Courtesyとは、日本語に訳すと礼儀正しい等と出てきてしまって、どのように日本語で説明したら良いのか非常に迷う用語です。研究者の中には本用語を関連性スティグマと呼んでいる場合もあるため、今回はその名前を利用したいと思います。

関連性スティグマとは、スティグマ化された個人と所属する集団を同じくすることにより、その他のメンバーにもスティグマが及ぶことを指します。主に家族、近しい友人、恋人等がそれにあたります。強いスティグマが社会に存在することにより、その個人のアイデンティティの形成や社会・保健資源やサービスにアクセスしづらくなるとの報告も。

母親へのCourtesy stigma

家族メンバーの中でも、特に母親に対するスティグマは多く報告されています。その理由は、子育てを通して子どもの障害の原因となっているという誤解が広く浸透しているためと言われています。これは自閉症の発症に母親の接し方が大きく影響しているという文献が発表されたことから始まり、その論文が否定された現在でも考えは広く知られています。

日本でもそういった説はいまだに信じている人がいるかも

また周囲が誤解しているだけでなく、母親自身も自分のせいなのではないか、健常に産んであげられなかったといった罪悪感を抱える傾向が高いとも報告されています。

そのような社会通念が存在する中では、子どもが社会規範に沿わない行動を行ったときに(公共の場で騒ぐ、ルールに従えない、いわゆる正常発達に沿わない、等)、そのような子どもを意図的に家族に含んでいるのではないかという誤解・先入観・偏見を生じ、そのような選択をしている家族全体(特に母親)に責任が負わされるような状態になりかねないのです。

このような社会からのスティグマは、家族を社会的資源から遠ざけさせてしまうと懸念されています。

スティグマは障害児家族にどう影響するの?

以下に、代表的にみられる家族へのネガティブな影響を取り上げます。

  • 親戚などに子どもの障害を伝えられないor理解してもらえず疎遠になる
  • 家族自身の友人関係や、非障害児親との人間関係を維持できない
  • 専門家の意見を仰ぐのに抵抗感を抱く
  • 公共の場に子どもを連れて出て行きづらくなる
  • スティグマを回避するため、子の障害について知らない人との関りを避ける

等が挙げられます。スティグマより社会ステータスが喪失すると前回の記事で説明しましたが、障害児の親の場合にもそれまで有していた人間関係や余暇活動へのアクセスなど、様々な社会的資源を失いやすくなるといわれています。

なかむら
かなこ

念押ししますが、これは機能障害を持っている個人が原因で起こるものではなく、社会にスティグマが存在することで生じるものだよ

スティグマを構成する社会の一部にもなりうる

また、前述したようなスティグマにさらされることにより、家族自身も障害児に対してスティグマを与える側になりかねないというリスクもあるといわれています。これは、激しい社会からの規範の押し付け、スティグマ被害に逆らい続けることが難しく、それに従ってしまった方が楽、という理由から発生すると考えられます。

スティグマはどのように作られるの?

このようなスティグマはどのように作られるのでしょうか?大きく3つの理由が考えられます。

①分離教育

日本では国際的な流れに合わせて現在インクルーシブ教育を進めようという方針を文部科学省が発表しています。しかしながら実際にはほとんどの障害児が特別支援教育を選択しているのが現状です。このような教育における分離は、通常学校の子どもたちから見て、特別支援学校に通う子どもたちを”others(他者)”という存在にしてしまいます。誰が何をしているのかよくわからない、という状態は、特別支援学校自体へのスティグマを強化する恐れがあるとも考えられているんです。

さらに保護者にとっては、住居から離れた特別支援学校に通うことで、コミュニティ内の人間関係が希薄になりやすいというデメリットもあります。交流がないという状態は同様にスティグマを強めると考えられます。

②ケアの家族依存

日本は欧米先進国と比較し、子育て関連の支出/GDP比が低い傾向があります(参考)。これは、日本の福祉システムが家族の機能を強調し依存しているためだと言われています。子育てや介護全般において同様の傾向があるものの、特に医療的ケアなどの複雑なニーズへの対処が必要な子への介護の場合、母親に過剰な負荷がかかっていることが問題になっています(参考)。

このように国家が制度や予算を整えずに、あくまで個人・家族内の責任であると強調することで、親の役割を拡大し続けているのではないでしょうか。実際には、ケアや介護は社会福祉にてカバーすべき領域ですが、障害児の場合には育児という影に隠れて、家族の労働力が搾取されているともいえます。

まとめ:つまり、障害ってなんなの?

今回、障害児の家族へのスティグマという観点から、Courtesy stigmaについて解説してきました。本来障害者とは、機能障害を有していることをきっかけにdisabledとなるものですが、機能障害のない家族やコミュニティメンバーであっても、社会からのスティグマによって”Disabled”となっているといえます障害とはなんなのか?Courtesy stigmaから、もう一度考え直してみていただければ嬉しいです。

 

参考文献

Birenbaum, A. 1970. On managing a courtesy stigma

Ali, A. Hassiotis, A. Strydom, A and King, M. 2012. Self stigma in people with intellectual disabilities and courtesy stigma in family carers: A systematic review

Teresa M. Pavia & Marlys J. Mason. 2012. Inclusion, exclusion and identity in the consumption of families living with childhood disability