【障害と人権①】国連の定める障害者権利条約とは?わかりやすくまとめてみた

インクルーシブ

こんにちは、かなこ(@MinmachiBuho)です。

我々人間には一人ひとり、人権というもがあります。その人権が侵害されないよう、国連がイニシアティブをとり人権を守るための条約をつくってきました。

女子差別撤廃条約(女性差別を禁止する条約)が1979年、子どもの権利条約が1989年に引き続き、2006年に障害者権利条約(Convention of Rights of People with Disability: CRPD)が採択されました。日本は2014年にこれに批准し、現在世界中で169か国が署名しているものです(参考)。

この条約に定められている要項に合うよう、日本では障害者差別解消法が制定されています。

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この障害者権利条約は、あえて新しい権利を訴えているものではなく、障害者が非障害者と同等の権利を行使できるようになるために何が必要か?何故必要か?という視点を私たちに与えてくれるものです。

なかむら
かなこ

この条約は、Nothing about us without us (我々抜きで我々のことを決めるな)というキーワードのもと、障害者団体の関与のもと作られたんだよ

 

今回は、障害者権利条約について、障害の権利モデルの視点から解説し、特徴的な条文をいくつかご紹介していきます!

障害の権利モデルってなんだろう

障害学において現在メインの考え方といえるのが、障害の社会モデルです。

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一方で、障害の社会モデルについては様々な批判もされています。例えば、社会モデルは社会側にバリアーがあることで機能障害をもつ個人が障害者になる、という理論ですが、その中になぜ社会的バリアを取り払わなければならないのか?取り払うのみで十分なのか?という点については明記されていません。そこで社会モデルの代替版、障害モデル2.0ともいえるのがこの障害の権利モデルです。

  • 人間は機能障害(impairments)によって人権を制限されない(人間は障害の有無にかかわらず同等の権利を有している)
  • 最大限かつ同等の権利、自由を享受できる環境が一人ひとりに整備される必要がある

というのがそのメインの主張です。社会的バリアが取り払われただけでは不十分で、教育や社会参加、雇用、そして自立生活をするといった権利が実現されなければいけない、というものになります。つまり、何か新しい権利を訴えているのではなく、非障害者と同等の権利を保障せよということを強調しているものになります。

障害者というアイデンティティ

障害の権利モデルのもう1点の特徴は、障害があることのアイデンティティを認めているということです。

障害者であることをポジティブに捉えろってこと?

社会的マイノリティであることは、体系的差別やスティグマによって様々な不利益を被ることがあります。それゆえに、そのアイデンティティをポジティブに捉えることは難しいと思われるかもしれません。では、レインボーパレードやブラックプライドという言葉を聞いたことがあるでしょうか?

 

Smaller gay pride march will go ahead, despite coronavirus fears
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彼らは社会的マイノリティであることで受ける不利益の撤廃・是正とともに、マイノリティであることのプライド・尊厳を表現しています。私の所属する障害学コースの講師の1人で、自身も障害者であるMiroの言葉を借りると、社会に障害を負わされていることに対しては声を上げるが、同時に自身が障害者であることを誇りに思っている。その2つは矛盾しないということです。Black prideやレインボーパレードのように、障害者が主催するパレードも各地で開催されています。

障害者権利条約第24条では、

手話の習得及び聴覚障害者の社会の言語的な同一性の促進を容易にすること (参考

という条文があります。これは、聴覚障害者のろうとしてのアイデンティティや文化を認めるもので、条約の特徴的な部分と言われています。

障害者権利条約の特徴的な条文をご紹介!

前述した24条の他にも、いくつか特徴的な条文があるので取り上げていきます。気になったものがあれば是非こちらのリンクから検索してさらに理解を深めてみてください(参考)。

4条:既存の法律の修正

こちらの条文では、障害者権利条約と両立しない既存の法律を廃止・修正することを定めています。ユニバーサルデザイン
をガイドラインにいれたり、民間企業の障害に基づく差別を禁止するような法律の導入も求められています。

6・7条:障害のある女性・子どもへの差別撤廃

”障害者”に含まれるはずの女性や子どもをあえて何故取り上げる必要があるのでしょう?実は障害者の間でも社会全体の構造と同じく女性差別や子どもへの差別・人権侵害というものが存在します。障害者と一言で述べてしまうと、その中にある複雑な差別構造を見失うことになりかねません。

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そこで、本条約ではあえて女性・子どもに関してそれぞれ1条ずつ明記し、配慮の必要性を強調しています。

11条:人道支援、30条:国際協力

災害や紛争、人道上の危機、そして国際協力においても、人々はチャリティーや福祉の対象ではなく権利の所有者であるということが強調されています。

本条約が締結されるまで、障害者というのは人道支援や国際協力においてメインストリームではなく、支援を十分に享受することが出来ませんでした。これらの条文に明記されることにより、障害者支援団体だけでなく国際機関や人道支援NGO等に障害者を包括した支援の枠組みを作成することを求めることが出来るようになったのです。

世界的に見ると障害者の多くは低・中所得国に居住しており、これらの国際団体の支援が必要な脆弱な環境で暮らしている場合が多数であると考えられています。この条文は彼らに支援が届くようになるための大きな転換点になりうるといわれています。

まとめ

障害者権利条約というのは、もしかしたら聞いたことがない!という方が多いかもしれません(かくいう著者も詳細はほとんど知りませんでした)。日本はこの条約に批准しているため、国家は障害者が差別を受けず人権を行使できる環境を提供する義務があるのです。日本の障害者差別については定期的に審査され国連に報告されていますが、我々一人ひとりも条約がきっちりと執り行われているか、監視の視点を持つことが重要であると言えます。